読書感想:朝井リョウ『正欲』

趣味

こんにちは。

唐突ですが、もともと私は、小説は一気読みしたい派です。
物語の世界観に完全に入り込みたいし、時間が空くと内容を忘れてしまうので(笑)
でもそう思っていると、なかなかまとまった時間を取ることができず、ここ数年は小説から少し遠のいていました。
その間は、章ごとに区切って読める育児本や自己啓発本などを読むことが多かったのですが、やはり小説からでしか得られないものがあるなーと思い、最近は少しずつ時間を見つけて読むようにしています。

めちゃめちゃネタバレしているので、これから読もうとしている人は要注意です!!

『正欲』

あらすじは以下のとおりです。(新潮文庫HPより引用↓)

自分が想像できる“多様性”だけ礼賛して、秩序整えた気になって、そりゃ気持ちいいよな――。息子が不登校になった検事・啓喜。初めての恋に気づく女子大生・八重子。ひとつの秘密を抱える契約社員・夏月。ある事故死をきっかけに、それぞれの人生が重なり始める。だがその繋がりは、“多様性を尊重する時代”にとって、ひどく不都合なものだった。読む前の自分には戻れない、気迫の長編小説。

まず冒頭に、児童ポルノ摘発の事件が描かれていました。
そして終盤には、「水に性的興奮を覚える」人たちが逮捕された事件がありました。
私は、「水に性的興奮を覚える人たちが、自分たちの思い描くような水を再現して、仲間たちで楽しむちょっぴり明るい未来」を想像していたので、この結末にかなり衝撃を受けました。

実は、上記2つの事件は同じ事件のことを言っていて、逮捕されたのは同じ人物だったのですが、私自身、読み終わった時点では、2つは違う事件で逮捕されたのは別人だと思っていました。
(1日で読み切れなかったのもあって、名前をしっかり覚えていなかったんです…笑 これが1日で読めない弊害…!!)

この本を読み終わったあとに、おススメしてくれた元職場の先輩と感想を送りあっていて、その時に同一人物であることを教えてもらい、気づきました(苦笑)
ただでさえ、衝撃的な結末だったのに、さらに冒頭の事件と同じ人物だったなんて…!!
これには、ぶったまげました…。
「水で性的興奮を覚える」人たちが、まさか「児童ポルノ」で逮捕されるとは全く想像していなかったし、結びつかなかったです。

そして、私自身「水に興奮する」人がいるなんて、人生で一度も想像したことがなく、本当に想像しきれない価値観が世の中にはあるんだなと感じました。


この作品の中で描かれていた「多様性」という考え方が、強く印象に残っています。

「多様性、という言葉が生んだものの一つに、おめでたさ、があると感じています。(中略)清々しいほどのおめでたさでキラキラしている言葉です。これらは結局、マイノリティの中のマジョリティにしか当てはまらない言葉であり、話者が想像しうる“自分と違う”にしか向けられていない言葉です。
想像を絶するほど理解しがたい、直視できないほど嫌悪感を抱き距離を置きたいと感じるものには、しっかり蓋をする。そんな人たちがよく使う言葉です。(p.9)」

この言葉を読んで、非常にグサッときました。
物語の初っ端から、朝井さんは刺してきますね(笑)
たしかに私は、自分が理解できるものに対しては、「それもひとつだよね。」と受け入れることができます。
でも、自分の想像を超えたものに出会った時に、同じように受け入れられるのか…。
おそらく、無意識に距離を取ったり、線を引いてしまうのではないかと思います。
加えて、その線をひいた外側の人たち、つまりマイノリティ側の人たちが、どれだけ苦しんでいるのか、考えたこともなかったなと。


「何でお前らは常に自分が誰かを受け入れる側っていう前提なんだよ。お前らの言う理解って結局、我々まとも側の文脈に入れ込める程度の異物か確かめさせてねってことだろ。(p.448)」

さらに、これを読んだとき、ハッとしました。
私はこれまで、どこかで“自分が受け入れる側”にいるつもりでいた気がします。
でも本当は、自分が“理解される側”になることだってあるはずです。
そう思った時、「多様性を受け入れる」という言葉の意味が、少し変わって見えました。


また、八重子という人物にも強く引っかかりました。
自分の正しさを信じて、相手にグイグイ踏み込んでいく姿。
読んでいて、正直苦手だなと思いました。
でもそれと同時に、もしかしたら自分の中にも同じような部分があるのかもしれないと気づきました。
強要とまではいかなくても、自分の正しさを信じて、相手に説こうとしがちな部分もあり、気を付けなければいけないなと思いました。


この小説を通して、

世の中には、自分の想像を超えるものがあるということ。
そして、想像できる範囲のものには「多様性」という言葉を使って受け入れるけれど、想像を超えたものには、無意識に線を引いてしまいがちであること。
「多様性」という言葉を安易に使うことの危険性。

を改めて考えさせられました。

自分自身はどこまで多様性を受け入れられるのだろう、そもそも「受け入れる」というのがおこがましいのではないか…とモヤモヤを抱えた状態で読み終えた次第です。
答えは簡単に見つけられるものではないけれど、考え続けるのも大事なのかなと思いました。

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